2024年1月1日のM7.6の地震(令和6年能登半島地震)

解説記事が「消防防災の科学」に掲載されています。

こちらをご覧ください。

【以下は、2024/01/03 時点の記事です】

2020年12月頃から活発な地震活動が継続していた能登半島北東部を震源とするM7.6の地 震が2024年1月1日夕方に発生しました。

石川県で起こった地震としては、歴史上最大規模の地震であり、初めて震度7を観測し、広い範囲で震度6強、6弱の強い揺れを観測し、甚大な被害を生じました。震源域は能登半島北岸に沿うように北東一南西方向に延びており、南東に傾斜した複数の断層が連動した地震であると考えられます。位置的には既に知られている海底の活断層である珠洲沖セグメント、輪島沖セグメント、猿山沖セグメント等に対応しています。

ただし、上記の海底活断層が今回のM7.6の地震を引き起こしたのか、それともそれらと並行する別の断層の活動により発生したのかは今後詳細に分析する必要があります。

M7.6の地震の震源は、2020年から継続する群発地震の震源域に位置しています。この群発地震は、地殻深部から上昇した水のような流体が原因で発生したものであると考えられています。上昇してきた流体が南東に傾斜する断層帯に入り、断層帯深部では断層の開口(膨 張)と逆断層型のスロースリップを引き起こし、周囲の断層を動きやすくする力を与えていました。また、断層帯に沿って浅部に移動した流体はその場 所にある規模の小さな断層を動きやすくしました。これら2つの要因により長期間にわたる群発地震活動が継続していました。

M7.6の地震の震源付近はこれら2つの影響を強く受ける場所であり、それらの影響によりM7.6の地震がトリガーされたと考えられます。また、地殻変動の変動源による周囲の断層を動きやすくする力は珠洲沖セグメントや輪島沖セグメント等の周囲の大きな断層にも働いており、群発地震の発生以前と比較して、断層破壊が起こりやすい状態になっていました。そのため、珠洲沖セグメントや輪島沖セグメントの境界付近でトリガーされた断層破壊が両側(北東側と南東側)に拡がり、これらのセグメントまたは並行する断層群を次々と破壊し、最終的に100 km 程度の長さを持つ震源域で断層破壊(断層のずれ)が生じ 、M7.6の地震規模になったと考えられます。

このM7.6の地震によるひずみの変化により、能登半島周囲の活断層や地下の断層は地震が起こりやすい状態になっていると考えられます。引き続き、規模の大きな地震の発生に注意する必要があります。

(注:上記の文章は2024年1月3日の時点のもので、今後の研究の進展により内容が変わることがあります)

M7.6の地震の震源付近の模式図

能登半島北岸沖の海底活断層の分布とセグメント区分(井上・岡村, 2010)。カラーの丸は気象庁一元化震源データによる地震の分布。黒線の矩形は1729年能登・佐渡の地震(Hamada et al., 2016)と2007年能登半島地震の震源断層(Hiramatsu et al., 2008)。