深部低周波微動とプレート境界のすべり速度、不均質性
南海トラフのプレート境界の固着域(巨大地震の発生域)の深部延長部(遷移領域)では短期的スロースリップイベント(SSE)や深部低周波微動が発生しています。遷移領域でのスロースリップによるすべり速度は深部低周波微動から推定することができます(Hiramatsu et al., 2005)。
スロースリップによるすべり速度の大きさをプレートの収束速度と遷移領域でのすべり欠損速度それぞれの大きさと比較すると、
スロースリップによるすべり速度 = プレートの収束速度 ー 遷移領域でのすべり欠損速度
の関係があることが分かりました(Hirose et al., 2010; Ishida et al., 2013; Daiku et al., 2018)。また、2011年東北地方太平洋地震は南海トラフでのスロースリップによるすべり速度に影響を与えていないことや紀伊半島南部ではスロースリップによる地震モーメント解放率が長期的に減少傾向にあったことが明らかとなりました(Kono et al., 2020)。
短期的スロースリップイベントは深部低周波微動と同期して起こります。短期的スロースリップイベントによる深部低周波微動の励起効率を調べると、紀伊半島北部で励起効率が高く、四国東部・中部で小さいことが分かりました(Daiku et al., 2018)。この励起効率の不均質はプレート境界面付近の蛇紋岩の不均質性(antigolite + olivine と antigolite + brucite)とその生成プロセスに関連した間隙水圧の大きさの違い(Mizukami et al., 2014)によるものであると考えられます。